子宮内膜症の発生病理に関する研究

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 60570772
• 研究機関: 浜松医科大学
• 研究代表者: 川島 吉良 浜松医大, 医学部, 教授 (90022764)
• 研究分担者: 住本 和博 浜松医科大学, 医学部, 助手 (30126817) ; 早田 隆 浜松医科大学, 医学部, 講師 (60135259)
• キーワード: 子宮内膜症 / 保存療法 / ホルモン療法 / 不妊症 / CA125 / 月経困難症 / 内性子宮内膜症 / 外性子宮内膜症

研究概要

子宮内膜症は、子宮内膜組識の異所性増殖に起因するものであるが、それ故、月経時に高度の月経痛(月経困難症)を主症状とする。内性子宮内膜症(腺筋症),外性子宮内膜症(チョコレート嚢胞)ともに、生殖年齢層婦人に好発するため、本症は、近年、不妊症の原因疾患としてとみに注目を集めてきた。すなわち、本症の根治的手術療法の対象となり得ない生殖年齢層婦人に対しては、薬物療法、つまり本症の発生病理からも明らかな如く、ホルモン療法がクローズ・アップされよう。当該年度では、かかる観点から、子宮内膜症の発生病理に迫るべく、子宮内膜症患者のホルモン療法にスポットを当てた。爾来、ホルモン療法は、子宮内膜症の保存療法の主役を担うものであるが、われわれは、LH・RHagonist等の新しいホルモン療法を駆使して、子宮内膜症が原因疾患とみなされる不妊症患者33症例について、46妊娠を得るに成功している。すなわち子宮内膜症管理例33症例46妊娠の経過の割合は、切迫流産27%,自然流産20%,切迫早産27%,早産14%,正期産66%,帝王切開36%であった。このように、ホルモン療法は、臨床的にも妊孕率の上昇という成果を通して、子宮内膜症の発生病理に大なるヒントを与えてくれるのである。
又、われわれは、以前よりCA125(卵巣癌より作成された単クローン抗体)が、子宮内膜症と関連を有する事を以前より指摘している。当該年度は、殊に血清CA125値測定が、子宮内膜症の保存療法のパラメータと成り得るかを検討した。その概要は以下の如くである。1.子宮内膜症は婦人科良性疾患のなかでも平均値、陽性率ともに高値を示した。2.保存療法における血清CA125値の変動は、ボンゾール400mg/日内服を3ケ月以上持続させる事により、15例中13例は正常域に低下した。以上から、CA125は本症の経過観察に重要である。

研究成果

• [文献書誌] 川島吉良: 臨床婦人科産科. 40. 59-61 (1986)
• [文献書誌] 川島吉良,早田隆,小林浩,嵯峨こずえ,三宅若葉: 産婦人科治療. 53. 245-252 (1986)
• [文献書誌] 川島吉良: 日本産婦人科学会雑誌. 38. 1243-1249 (1986)
• [文献書誌] 早田隆,川島吉良: 産科と婦人科. 54. 609-613 (1987)
• [文献書誌] Takashi,HAYATA.;Yoshiro,KAWASHIMA.: Am J Obstet Gynecol. 156. (1987)
• [文献書誌] 早田隆,三宅若葉,小林浩,川島吉良: 産科と婦人科. 54. (1987)
• [文献書誌] 編集 山村雄一,織田敏次,五島雄一郎,清水喜八郎,川島吉良-月経困難症: "薬物療法の実際 第1編 薬物療法" アサヒメデイカル,東京, (10511155 (1986)
• [文献書誌] 編集 岩田正晴,熊坂高弘,川島吉良: "産婦人科Q&A(子宮内膜症の診断と治療 子宮内膜症のホルモン療法)" 金原出版株式会社,東京, 543 (1987)