研究課題/領域番号 |
60570777
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足高 善彦 神戸大, 医学部, 助教授 (10030959)
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研究分担者 |
大橋 正伸 神戸大学, 附属病院, 助手 (90176975)
丸尾 猛 神戸大学, 附属病院, 講師 (60135811)
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研究期間 (年度) |
1985 – 1986
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キーワード | 甲状腺ホルモン / 絨毛 / 妊娠中毒症 / 5-deiodinase / TSH / 顆粒膜細胞 / 甲状腺機能異常 / IUGR |
研究概要 |
(ア)周産期における母児甲状腺機能の推移:妊娠の経過と共に妊婦甲状腺機能が亢まっても、甲状腺ホルモン(THs)の動態から見る限り、その生理活性は低下し、母体の代謝は抑制の状態にあり、IUGRや妊娠中毒症妊婦ではこの状態が一層顕著になると考えられた。分娩後は産褥1〜3日で更に代謝が低下し、その回復には約6日を要した。他方、新生児では生後1時間にTSH分泌ピークを認めるも、f-【T_4】とf-【T_3】は生後3時間と24時間の2峰性ピークを示した後f-【T_3】の増加、f-【T_4】の漸増傾向を示し、児は分娩後、先ずadaptation triggerとしてTSHの分泌亢進を、次いで出生後のエネルギー誘導の為にTHsの分泌を高め、catabolicな代謝状態をかもしだし、胎外への環境変化に適応して行くと考えられた。 (イ)胎盤におけるTHsの代謝:絨毛microsome分画に活発な5-deiodinase活性が在り、【T_4】をr-【T_3】へと転換される事で、胎児を母体由来THs被曝から保護しているが、母体側では嫌気性の本酵素のためにhypometabolicな状態となり、IUGRや妊娠中毒症妊婦胎盤では本酵素活性物質が益々亢進して一層代謝低下状態になると考えられた。 (ウ)絨毛由来甲状腺刺激活性物質について:ヒト甲状腺細胞への結合実験から、精製hCGやsubunitにはTSH作用がなく、asialo-hCGはTSHのagonistとして作用する事が判明した。 (エ)THsの絨毛と卵巣に対する作用:絨毛in vitro培養実験で至適濃度の【T_4】,【T_3】が絨毛のprogesterone(P)産生とaromatizationの亢進に基くestradiol(E)産生を促進するが、過剰ではむしろ抑制し、甲状腺機能異常合併妊婦の流産し易い原因がここにもあると考えられた。ブタ顆粒膜細胞培養実験で至適濃度【T_4】が末分化顆粒膜細胞の黄体化に伴う形態変化とFSHによるhCG/LH receptorの誘導を促し、PとEの産生分泌をも著明に高めた。甲状腺機能異常婦人の卵巣機能障害が、卵巣でのTHsの直接作用に基く可能性も推察された。
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