研究概要 |
咋年までの検討で胎児は分娩時のストレスに対してACTH副腎系の他に末梢自律神経より分泌されると考えられるノルアドレナリンと副腎髄質がその主たる産生部位とされているメタエンケファリンが母体の末梢血中濃度に比べて著明に増加することが明らかになった。この現象は経膣分娩時のものが帝王切開時に比べて有意に高値を示すので分娩時のストレスがこれらニューロペプチットあるいはニューロトランスミッターが胎児の血圧調節,糖代謝に重要な役割を果していることは明らかである。一方胎児は羊水中に生活しており、その水分および電解質代謝も成人と異なる機能を発揮していることも十分推定できる。現在まで経膣分娩では予定帝切分娩に比べ〓帯血中のADH,オキシトシンが高く、このことは下垂体後葉ホルモンも分娩時に影響を受けることがわかる。特にADHは低酸素,疼痛,体循環量,浸透圧等の変化に相関があるので分娩時の急激な全身的変化に対応し、これをcontrolするために後葉ホルモンが重要な意義をもっていることが推測される。一方ADHと相反する作用を示す心房性ナトリウム利尿ホルモン(ANP)濃度は胎児仮死例で上昇することが指摘されているのでADHと同時に測定し、分娩ストレスの指標として血液ガスを測定、各々の関連の有無を検討してみた。ANPは母体血中より〓帯血中で高い傾向がみられ、同時に測定したADHは母体側でも胎児側でも基準値より有意に高かったが、中でも〓帯静脈値はもっとも高値を示した。母体血中ではANPとADH間に明らかな相関はみられなかったが、〓帯静脈血においてはANPとADHの間に有意の相関が認められた。また〓帯血中のpHが低いものはANPが上昇した。一方予定帝切児に比べ経膣分娩児ではANP濃度は高く。さらに陣痛発来によって母体血中ANPは上昇した。心疾患を合併した母体血でもANPは高値を示した。
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