研究概要 |
ヒト体外受精胚移植法において、卵胞吸引時の卵胞の大きさと採卵、受精分割の状態を比較検討した結果、卵胞液量が1ml末満の小卵胞は発育卵胞である可能性は低かった。採卵率は卵胞液5ml以上のものが非常に良好であった。また受精分割率は卵胞液3ml以上の卵胞で比較的良好であった。 プロラクチン(PRL)の分泌はエストロゲン(E)レベルと密接な関係があり、hMG等による過排卵周期ではPRLが高値になると考えられる。本研究においても、高PRL群のEは低PRL群のEより高値であったことより、体外受精胚移植法周期のPRL高値は過排卵によるEの高値が関与している事が示唆された。しかし、受精率,分割率は高PRL群と低PRL群の間に差は認められず、妊娠率はむしろ前者が高かった。従って一過性のPRLの上昇は、卵あるいは卵胞の成熟を直接障害しない事が示唆された。 cAMPは各種哺乳動物の卵の成熟を抑制する事が知られ、本研究においても確かめられた。ところが卵胞内卵は、持続的にcAMPにさらされていると卵成熟は認められないが、一過性のcAMPの上昇により減数分裂が再開する事が判った。 家兎卵巣灌流実験系にステロイド生合成阻害剤を加え、卵の成熟,受精に及ぼす影響について検討した所、ステロイド抑制は、ゴナドトロピン刺激に伴う卵核の成熟には何ら影響を与えないが、受精率を著しく低下させた。またエストロゲンを補充する事により受精阻止効果が認められなくなった。これらにより、卵巣ステロイドが卵核の成熟ではなく、受精,初期発性過程に必要な細胞質の成熟に極めて重要な役割を果していることが示唆された。 今後は、精子性状の受精卵に及ぼす影響とも検討したい。
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