研究概要 |
着床における凝固線溶系の関与とその調節機序解明のため、以下の実験を行った。 1)着床モデルの動物実験において、凝固線溶系変動薬剤(トロンビン,ウロキナーゼ,FOYなど)投与が着床および受精卵の発育におよぼす効果の検討。 2)遅延着床マウスにおいてプロゲステロン,エストロゲンが子宮内膜の凝固線溶系におよぼす効果と着床との関連性の検討。 〔成績〕1)凝固線溶系変動薬剤を着床時に投与すると、トロンビン(凝固亢進)では受精卵の発育は用量依存性に抑制され、子宮内膜での血栓形成による発育抑制が示唆された。ウロキナーゼ(線溶亢進)ではある一定濃度以上で着床配列が不規則になり、受精卵の発育も軽度に抑制された。FOY(凝固・線溶・キニン系抑制)では受精卵の発育は抑制されなかったが、子宮角に受精卵が集中して着床し、受精卵の移動が抑制されることが示された。すなわち凝固線溶系変動薬剤の着床時投与は受精卵の発育および着床配列に影響をおよぼすことが示された。 2)遅延着床マウスにおける子宮内膜のプラスミノゲンアクチベーター(PA)活性はプロゲステロン投与によって遅延着床を維持している期間は子宮内膜PA活性は低下し、エストロゲンによる着床刺激時に子宮内膜PA活性は一過性に急速に上昇した。また卵巣摘出非妊娠マウスの子宮内膜PA活性もプロゲステロン投与にて低下、エスノロゲン投与により上昇することが示された。これらの成績より、性ホルモンが子宮内膜PA活性に影響を与え、着床を制御していることが示唆された。
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