研究概要 |
ABO(H)血液型抗原は、正常の各臓器に広く分布しており、癌化によりこの抗原の発現が変化する。正常子宮内膜及び、子宮内膜癌をDako社の抗ABO(H)血液型モノクローナル抗体(Mab)とUEA-1を用いたImmuno-及びlectin-peroxidase法にて解析した。その結果子宮内膜は元来、ABO(H)血液型抗原の表現が比較的少ない臓器であった。しかし子宮内膜癌では患者の血液型に拘わらず、O血液型抗原(H型抗原)が著名に増加してくることが明らかとなった。そこで、癌組織上に増加するH型抗原が本来正常の状態で表現されているH型抗原と同じものであるかについての検討を試みた。子宮内膜の培養組織細胞株ISHIKAWA株に対して反応するMabを作成し、子宮内膜癌及び、正常人O型赤血球に同時に反応するMabを多数作成した。これらの中で大部分のMabは各種ABO(H)変異型赤血球に反応するパターンなどから従来のH型抗原に対するモノクローナル抗体と同様の特異性を持つMabであることが推定されたが、それらの中でC12-MabはこれらのMab及びDako社の抗H型Mabとは明らかに異なりO型赤血球に非常に強く反応するがA1,A2赤血球には全く反応しない性格を示した。そこで正常の子宮内膜と子宮内膜癌の組織をこれらのMabを用いて比較検討した結果C12-Mabは他の抗H型MabやUEA-1と比較してみると染色部位は概ね同様であるが子宮内膜癌には著しく高い反応性を示し正常子宮内膜には殆ど反応しない点で他のH型抗原と反応するMabとは異なった性格を示した。また癌患者の血中にC12-Mabと反応する抗原が検出できたが他のH型抗原と反応するMabは単にH抗原を検出するに過ぎず癌特異的血中抗原は検出できなかった。以上の結果から、子宮内膜癌などで増加するH型類似抗原は正常組織上に表現されるH型抗原とは異なったものであることが推定される。
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