真珠腫上皮の中耳腔内進展メカニズムについて不明な点が多い。そのメカニズムを解明する為、細胞培養法を用て実験を行った。真珠腫由来の表皮細胞(CH-Ep)は、線維芽様細胞(CH-Fi)から得た使用済培養液(10%濃度)を添加する事により、CH-Epの分裂・増殖が促進された。この測定は【^3H】-tymidine、【^3H】-prolinの細胞内への取り込みを指標とした。さらにこの作用は胎児鼓膜の表皮細胞(F-Ep)の分裂・増殖にも効果がある。しかし逆に胎児鼓膜線維細胞(F-Fi)の使用済培養液は各々の表皮細胞には何ら作用しなかった。次に炎症下のモデル実験として、CH-Ep、F-EpにE-coliのendotoxin(LPS)を100μg/ml〜100pg/mlの各濃度で6時間培養液中に添加した。結果はCH-Ep、F-EpともにDNA、蛋白合成能は変化を示さなかった。さらにLPS1Mg/mlを1〜72時間作用させてもDNA・蛋白合成能に変化は認めなかった。この事実からLPSは表皮細胞には作用しない事が判明した。一方CH-FiにLPS100μg/ml〜50pg/mlを216時間に渡って作用させると50μg/mlをピークに濃度匂配を示しつつDNA、蛋白合成が促進され、形態的にもmicrovilliの著しい形成、細胞小器官の発達が認められた。そこでCH-FiにLPS50μg/mlを添加し、CH-Fiを刺激して得られる使用剤培養液は、非添加例に比べより著しいCH-Epの分裂、増殖をもたらした。これは電顕的にも形態変化として観察された。しかし対照のF-FiにLPSを添加してもF-Epには何ら変化は認められない。次いでゲルマンフィルターを介してCH-FiとCH-Epを培養すると対照例には認めないCH-Epの分裂増殖が観察された。以上の結果から、真珠腫表皮細胞の増殖には上皮下結合組織が関与しており、CH-FiはLPSによってCH-Epを増殖させる物質をより多く分泌する事が示唆された。又、in vitroではCH-EpとCH-Fiの細胞間直接作用も関与する事が考えられた。
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