研究概要 |
1.組識培養 ヒトの手術材料から得た増殖膜の培養においては、培地としてRPMI1640よりHAMF12とMEMを用いたほうが、培養系を確立させるのに良好であることが判り、この培養系に細胞運動を抑制する薬剤であるサポニンを投与したところ、高濃度では細胞の壊死が、低濃度では細胞運動の抑制が認められた。細胞増殖を抑制すると考えられる薬剤である【PGE_2】,【F_(2a)】,【D_2】では有意の結果は得られなかった。しかし、ラット新生児の大脳皮質から得た星状膠細胞の培養系においては、5FUで0.5μg/ml以上、デキサメサゾンで10μg/ml以上の濃度で細胞増殖の抑制がみられた。また、ラットの網膜色素上皮細胞の培養系においても、ほぼ同様の濃度において細胞増殖の抑制が確認された。今後は、これらの濃度における薬剤が、周囲の眼組織にいかなる毒性を有すかを検討する必要がある 2.動物実験 家兎眼の硝子体をヒアルロニダーゼにより融解し、人工的網膜裂孔を作って網膜剥離を形成させた場合には、硝子体増殖膜が形成される確率は10〜20%であった。細胞増殖抑制をする薬剤を硝子体内に投与して、増殖膜形成の抑制を試みたが、硝子体増殖膜が形成される確率が低いため、今回の実験群では有意の結果が得られなかった。家兎新生児から得た星状膠細胞を培養し、その母親の硝子体中に培養星状膠細胞を注入したところ、100%に硝子体増殖膜が形成され、増殖膜の構成細胞成分はほとんどが星状膠細胞であることが判明した。硝子体増殖膜を効率良く形成させる方法が確立されたので、今後各種薬剤によるin vivoでの実験をする必要がある。
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