研究概要 |
電流刺激によっても視覚が形成されることが知られており、電流刺激による視覚反応(Electrically evoked Response,EER)は電気生理学的な方法で記録され、基礎的ならびに臨床的な研究が行なわれている。今回の研究ではEERの諸特性をさらに明らかにするために、EERでこれまで深く分析のなされていない早期成分を含めた分析を行なった。基礎的なEERの測定の方法の確率と正常EERの資料を得るため、軽度の屈折異常以外に眼の異常のない22名の22眼についてEERの測定を行なった。電流刺激によるアーチファクトと明確に区別できる比較的早期のEERの記録が可能であった。EERは比較的早期の3個の小波と、150msec附近に出現する緩やかな波によって構成されており、明順応10分後の明順応下EERと明順応光消燈直後の暗順応下のEERの波形成分は基本的には類似していた。EERの各波形成分の潜時は順応条件によって差異が見られず、EERの4個の成分の潜時の平均値は41nsec,64msec,107msec,167msecであった。順応条件による変動について検討すると暗順応開始直後のEERの各波形成分の振幅は明順応下EERに比べ有意に増大していた。 次に、球後麻酔による視覚に対する影響を検討するために、球後麻酔前と麻酔後にVERとEERの測定を行った。麻酔後は時間の経過とともにVERとEERの振幅は有意に減弱し、EERもVER同様、視神経の伝達ブロックの影響をうけることが分った。 ERGあるいはVERの振幅が強く減弱する強い硝子体出血のある眼においてEERは良好な反応が記録できた。今回の研究によりEERの定量的分析が可能となり、EERは従来の電気生理学的方法に加えて網膜疾患、硝子体疾患さらには視神経疾患に対する視機能検査法として利用できる可能性のあることが示された。
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