1.種々の条件下におけるウサギの眼圧と尿水中の炭酸ガス分圧、重炭酸濃度との関係について。 フェノールの結膜下注射によって実験的にウサギに緑内障をおこし、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)の投与によって尿水中の炭酸ガス分圧や重炭酸濃度が変化するかどうかについて調べようとした。しかし、一定した実験条件の設定ができず明確な結論を得ることができなかった。そのため、現在、レスピレーターによって血液尿水中の炭酸ガス分圧、重炭酸濃度を変えることを試みているが、未だ結論を得ていない。 2.尿水産生におけるナトリウムイオンの役割について。 摘出したウサギ毛様体をUssingのチャンバーに固定し、培養液のイオン組成を変え、経上皮電位の変化を観察した。重炭酸イオンと経上皮電位との関係については既に報告していたが、ナトリウムイオンと経上皮電位との関係についても同様の現象がみられた。すなわち、ナトリウム、カリウム、塩素、重炭酸などの各イオンを含む培養液中では、摘出した毛様体は後房側が実質側に対し負の経上皮電位を示すが、ナトリウムイオンを除いた培養液中では、正の電位を示した。この電位は、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)を加えても変化しなかった。各イオンを生理的な量含む培養液中では、質の経上皮電位の絶対値はアセタゾラミドを加えることにより低下する。従って、炭酸脱水酵素活性に部分的に依存する毛様体の負の経上皮電位の形成には、細胞外にナトリウムイオンの存在が必要である。この負の経上皮電位はウアバインによって影響をうけたことを考えあわせ、ナトリウムイオンは重炭酸イオンの輸送に結合して重炭酸イオンの輸送を促進しているという仮説を提出した。
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