研究概要 |
脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の網膜血管においては、高血圧による血管病変は視神経乳頭部付近の細動脈領域から起こってくることを眼底写真,螢光眼底写真ならびにトリプシン消化網膜伸展標本などにより観察してきた。しかし網膜血管より後方の細動脈の透過性の亢進の有無については、通常の方法ではその病理組織学的検索が困難であった。特にSHRSPでは高血圧により脳卒中をおこし、脳圧亢進より高血圧性視神経乳頭浮腫をおこしてくるが、この視神経の細血管の高血圧性変化を検索するために血管基底膜成分であるラミニンおよび【IV】型コラーゲンの抗体を用いた間接螢光抗体法で観察を行った。この方法により従来より観察が困難であった視神経乳頭部および細血管の分布が詳細に観察できるようになっり、SHRSPでは網膜血管基底膜の障害にかぎらず乳頭周囲の脈絡膜血管,視神経の細血管に至るまで、広範囲の高血圧性血管病変をうけていることがわかった。なお今回のSHRSPの網膜血管にも、高血圧性網膜細動脈瘤が認められ、詳細な病理組織変化を検討することにより、高血圧が持続するかぎり網膜血管は細動脈壊死が進行し、眼底出血をおこしてくることが判明した。そして出血あるいは閉塞した血管は再疎通がおこっても、高血圧が改善されない限りは末梢部病変は悪化することがわかった。しかし、高血圧症の患者の網膜血管の細動脈瘤より眼底出血をおこしてきた症例では、高血圧を治療することにより、出血の吸収、視力の改善を認め、予後良好な経過をとったしょうれいを経験し、その経過を報告した。即ち高血圧による細動脈壊死性病変が進行していても、薬物による血圧コントロールにより、血管は修復され、再疎通をみるとともに、高血圧が管理されている状態では網膜血管細動脈瘤からの眼底出血は急速に吸収されることが判明し、今後の治療方針に大きく役立つものと思われた。
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