研究概要 |
各種唾液腺腫瘍型の構成細胞について、筋上皮性分化の有無や程度、化生の方向等を検討する目的で、本年度も以下の細胞マーカーや基質成分の局在観察を続行し、腫瘍型間での比較を行った。1.腫瘍性筋上皮の基質に特徴的なグリコサミノグリカンに対するルテニウムレッド染色によって、多形性腺腫(PA)及び腺様嚢胞癌(ACC)がそれぞれ超微形状の異なる基質顆粒を示すところから、他の腫瘍型の粘液様基質についての電顕組織化学的観察を重ね、それらと両腫瘍型との近縁関係を検討した。筋上皮腫ではPA型,基底細胞腺腫,上皮筋上皮性介在部癌,一部の明細胞腫や基底腫様を呈した未分化癌ではACC型の基質顆粒が認められた。2.ラミニンの免疫染色と超微所見との対比を行い,PAや特に基底板産生の著明なACCの基質が好染し、腫瘍性筋上皮の同定に有用であることが確認された。ACCに特徴的な硝子様基質は、基底板物質・細線維・コラーゲンの構成比率に応じて、多様かつ移行的であることが示された。3.S-100蛋白の免疫染色によって、PA及び筋上皮腫の細胞が好染し、腫瘍性筋上皮の同定にある程度有用であるとみなされた。明細胞腫には、全細胞が陽性を示す例と、陰性例が区別され、それらの組織発生が異なる可能性が示唆された。粘表皮腫等の胞巣内に染め出された樹状細胞はランゲルハンス細胞を表わすものと考えられた。4.腫瘍性筋上皮の基質にしばしば出現する弾力線維について、抗エラスチン抗体による免疫染色を試みたが、今のところオルセイン染色に優る結果を得ていない。5.今後、上記の各方法に加えて、アクチン,ミオシン,筋上皮に特異的なサイトケラチン等の局在も検討し、腫瘍細胞の分泌上皮性分化の検討を併せて、多数例の解析を行うべく、本年度、学外機関から相当数の材料収集を行うことができた。
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