研究課題
一般研究(C)
各種唾液腺腫瘍にみられる腫瘍性筋上皮細胞について、その関与の程度や分化・化生の方向を検討し、以下の成果を得た。1.タンニン酸・燐モリブデン酸・リバノールファストシアニン5RN(TRL)染色を初めて唾液腺腫瘍に適用し、脱樹脂切片を染色する手技を確立、超微所見との直接的対応により、TPLの反応がマイクロフィラメントの局在と一致することを確認した。40例の唾液腺腫瘍をこの方法で解析した結果、それらを筋上皮関与の程度に従って4群に分類でき、TPL染色が腫瘍性筋上皮のスクリーニングに役立つことが示された。2.筋上皮腫を多形性腺腫(PA)と比較した結果、本腫瘍がPAの特別型ではあるが、臨床病理学的には区別すべきこと、S100蛋白、ケラチン、ビメンチン等が腫瘍性筋上皮マーカーとして有用であることが示された。3.PA及び腺様嚢胞癌(ACC)を対象に、基質成分の電顕組織化学的検索を行い、両腫瘍型における基質顆粒の形状の相違、それらにおけるヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸の超微局在を明らかにした。筋上皮腫や一部の明細胞腫にはPA型、基底細胞腺腫や基底腫様未分化癌にはACC型の基質顆粒が証明され、これらの腫瘍と両腫瘍型との近縁関係がうかがわれた。4.免疫染色と電顕観察との対応によって、ACCの硝子様構造が構成要素の比率に応じて多様かつ移行的であること、ラミニンの局在が腫瘍性筋上皮を同定するのに有用であることが示された。5.超微的に筋上皮関与のうかがわれるところから、粘表皮腫が、排泄導管よりもむしろ終末部の腺房・小導管ユニットより発生する可能性の強いことが推測された。そのほか、研究期間を通じて、相当数の唾液腺腫瘍材料を収集することができ、今後、多様な腫瘍型を網羅する材料を多角度より解析することによって、唾液腺腫瘍の組織発生学的細分類を行うための基盤を備えることができた。
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