研究概要 |
う蝕の主要原因菌S.mutansは、ショ糖から粘着性の非水溶性グルカン(ムタン)を産生し、う蝕原性歯垢の形成を促す。この多糖をグルカナーゼにより酵素的に分解して歯垢形成を抑制し、う蝕や歯周病を予防しようとする多くの試みがなされ、その有効性が実証されている。本研究は、これらグルカナーゼの大量調製と口腔内での活性発現を意図し、ヒト口腔から分離したグルカナーゼ産生菌のムタナーゼ遺伝子およびデキストラナーゼ遺伝子を、λファージに遺伝子組換えすることを試み、以下のような結果を得た。 1.S.mutansB13-N株の純化GTase標品を用いてムタンを酵素的に合成し、さらにそれをKI【O_4】酸化してα-1,3グルカンを大量調製した。 2.ヒト口腔液より、ムタン含有BHI平板上に透明帯を形成するムタナーゼ産生菌1株(MU株と呼称)を分離した。本菌は、S.mitiorと同定され、デキストラナーゼ産生能をも有していた。 3.MU株が産生するムタナーゼおよびデキストラナーゼを部分精製し、それらの家兎抗血清を調整した。 4.MU株菌体をムタノリシンで溶菌し、20Kb以上の高分子染色体DNAを調製した。そのsau3AI部分切断物とλL47.1DNAのBamHI完全切断物を結合後、in vitro パッケージング法によりクローンバンクを作成した。 5.両抗血清混液を用いるイムノブロッティング法でスクリーニングを行い、パーオキシダーゼ活性染色される7種のファージクローンを得た。 6.それらをE.coliに感染させて作成したファージライゼートのいずれにも、ムタナーゼ活性およびデキストラナーゼ活性は検出されなかった。現在、抗デキストラナーゼ血清と特に強く反応するファージクローンについて、その遺伝子産物の解析を進めている。
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