研究概要 |
1.アルカリホスファターゼの基質としてのホスアミノ酸(P-Ser,P-Tyr,P-Thr)がアロステリックな活性調節因子の一つに成り得るかどうかということが、【^(31)PNNMR】を用いた速度論的研究で詳細に調べられたところ、次のような事実が究明された(J.Biochem.(Japan)印刷中)。 (1)一基質系(反応液に各アミノ酸を別々に含む)においては、それらのホスホアミノ酸の脱リン酸化過程の初速度レベルにおける基質特異性は生じていないが、反応スタート後数十分経過するとP-Ser或はP-Thrの脱リン酸化速度はP-Tyrのその速度よりもかなり遅くなる。 (2)二基質系(反応液に二種のアミノ酸(P-TyrとP-Ser,或はP-TyrとP-Thr)を含む)においては、脱リン酸化過程の初速度はP-Tyrの方がP-Ser或はP-Thrの場合より2.4〜4.5倍速い。この条件下での反応スタート後数十分経過したときのP-Ser或はP-Thrの脱リン酸化速度はP-Tyrのそれよりもはるかに遅くなる。 (3)一基質系及び二基質系のどちらにおいても、緩衝液成分にアルコール性の水酸基がある場合には(今回の場合にはトリスが用いられている)、その水酸基が本来のホスホアミノ酸の脱リン酸化反応中にリン酸化されている。 (4)(3)に示されたようなアルコール性水酸基のリン酸化は、アミノ酸の一つであるセリン(P-Serからの生成物でもある)でも実験に起こる。この生成物の再リン酸化が可能なときに(1)或は(2)に示したような、ホスホアミノ酸の脱リン酸化の速度(特に反応スタート後数十分経過したときの)に違いが生じてくる。2.上記(1)及び(2)の特に初速度の問題が、アルカリホスファターゼのアロステリックな活性調節と関連している。P-TyrがP-Ser或はP-Thrと競合状態で存在しているとき、それら基質に対する親和性の違いがその酵素の活性サイト内に誘導されるものと思われる。今後は何故にP-Tyrの方に特異的な誘導が起こるのかを重点的に行っていく予定である。
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