研究概要 |
私共は本年度B.gingivalis特異的モノクロナール抗体が認識する特異抗原の精製を研究の中心課題とした。その特異抗原の精製は以下通りに行ない、単一精製抗原として単離することができた。すなわち、B.gingivalis381株の超音波破砕物より外膜分画を調製し、0.5%β-octhyl-glucoside可溶画分を分離する。この画分を本モノクロナール抗体の吸着したアフィニティークロマトグラフィーを用い、その精製を試みた。その結果、その酸溶出画分はSDS-PAGEによりほぼ単一バンドとして検出された。またこの単一バンドはB.gingivalis特異的モノクロナール抗体を用いたWestern blottingassayにおいても確認された。この精製特異抗原は分子量6200で、トリプシン,プロテァーゼ,熱に感受性であったが、RNA分解酵素ならびニュウラミダーゼに対しては抵抗性であった。この精製抗原は、B.intermedius,B.melaninogenicus,Fusobacteriumnucleatum,Eikenella corrodens,さらにActinobacillus actinomycetemcomitansの各ポリクロナール抗体とはEnzyme-linked Immunosorbent assayで調べる限り交又反応を示すことはなかった。この結果は本精製抗原がB.gingivalisに対しきわめて高い特異性を有していることを示す。 私共は以上のB.gingivalis特異抗原に対する成人性歯周疾患者38名の血清中の抗体価を求めた。その結果、本抗原に対するIgG抗体価は、Russel periodon-tal Indexにほぼ平行して上昇した。しかし、IgM抗体価は、そのような進行度とは相関関係を示すことはなかった。 以上の知見により私共はこのB.gingivalis特異抗原は今後成人性歯周疾患患者血清中の抗体価の測定において有力な材料を提供するものと考えている。
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