研究概要 |
Streptococcus mutans B13N株の染色体DNAを分離し、制限酵素Sau3Aで部分消化し、ファージベクターλL47-1BamHI切断分子と結合させた後、in vitro pakaging法を用いて遺伝子バンクを作成した。λファージバンクをE.coli K-12株に感染させてファージプラークを作成した後、ニトロセルロース膜にクローン蛋白質を吸着させ、ウサギ抗不溶性グルカン合成酵素(I-GTF)およびパーオキシダーゼ標識したヤギ抗ウサギIgGを用いて、Immunoblot-ELISA法によりスクリーニングを行った。免疫学的に反応したファージクローンを再びE.coliに感染しファージライゼートを作成し、スクロース加水分解活性をもつクローンを再スクリーニングした。酵素活性をもつクローン中からλMDSM39を選び、I-GTFの酵素学的および物理化学的諸性質を検討した。その結果、クローン化I-GTFはSDS-PAGE、およびHPLCゲルろ過法分析により分子量約16万、等電点電気泳動法による分析の結果、等電点3.8であることが判明した。またλMDSM39にS.mutans由来の水溶性グルカン合成酵素である6s-GTFあるいはデキストランT10を加えたところ、著明に活性化され、プライマー要求性であることが判明した。さらにλMDSM39ファージライゼートをスクロースと反応して得られた不溶性グルカンをメチル化分析した結果、約92%がα1,3結合によるグルコースポリマーであった。以上の結果は、従来より報告されているS.mutans B13N由来I-GTFと諸性質が類似していた。これらのことから、S.mutans B13NI-GTFの遺伝子クローニングが成立し、I-GTF遺伝子はE.coliの中で遺伝子発現可能であることが示唆された。λMDSM39クローンはI-GTFの分子遺伝学的、生化学的研究に役立つのみならず、齲蝕ワクチン材料としても有用となろう。
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