研究概要 |
歯根膜由来細胞によらない修復では骨性癒着や歯根吸収などの傷害を生じる。このような問題を引き起こす歯周組織欠損の大きさを明らかにするために、2種類の外科的根面の欠損を作った。ビーブル犬6頭の犬歯と小臼歯を用いた。第一の欠損は歯根部に作った。歯肉弁を歯槽粘膜部から翻転し、2×2mm,4×4mm,6×6mmの大きさで歯槽骨,歯根膜,セメント質を削除した。その後、歯肉弁を元に戻して縫合した。第二の欠損は歯頸部に作った。歯肉弁を辺縁歯肉から剥離して、セメント質,歯根膜,歯槽骨を取り除き、Ph1のクエン酸を3分間塗布した。両欠損ともに歯肉弁を元の位置に戻し縫合した。歯根部欠損で2×2mmには、ほとんど完全な歯周組織の再生を生じており、4×4mmや6×6mm以上のグループでは完全な再生を認めなかった。新生セメント質は欠損の外形に沿って僅かに増殖していた。歯槽骨に関しては、6×6mmの欠損における根面では、歯槽骨による根面の完全な被覆は認められず、新生セメント質が欠如した部分では、根面に平行に走行する結合組織線維が認められた。しかし、いずれにも骨性癒着や歯根吸収は認められなかった。歯頸部欠損群のクエン酸塗布群や非塗布群において、上皮の深行増殖が強く抑えられた場合には、歯槽骨,歯根膜の再生は認められず、3ヵ月の標本においても根面には活発な歯根吸収が認められた。以上のことから、第一の実験系の歯根部では、従来言われているような歯根膜由来の細胞がなければ歯根の吸収の骨性癒着を起こすという結論を導き出すことはできなかった。第二の実験系から、歯頸部の欠損では修復過程にたとえ6×6mm以下の欠損であっても活発な歯根吸収が認められた。歯頸部では上皮の影響のない状態においても歯根部の欠損に比して、歯周組織の再生には極めて条件が悪いと考えられる。
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