研究概要 |
コンポジットレジン(以下複合レジン)修復法を行うに当っては、有効な歯髄保護作用を有する裏層材・覆とう剤(以下裏層材)を象牙質形成面に応用して歯髄を保護するが、応用する裏層材はレジンとの間で不都合な反応性変化を生じないことが必要である。そこで本研究では、第【I】実験群として5種の裏層材について、これらが複合レジンの重合に及ぼす影響を走査型電子顕微鏡を使用して検討した。その結果、グラスアイオノマーセメント,カルボキシレートセメント,α-TCPは、複合レジンの重合を阻害しない裏層材であることが確認された。一方、亜鉛幸ユージノールセメントおよび硬化型水酸化カルシウム製剤は、いずれも裏層材側では凹凸不正像,複合レジン側では重合異常層(裏層材硬化直後では、それぞれ約80μm幅,10数μm幅,1週間後では20μm幅,数μm幅)が観察された。 第【II】実験群としては、可視光線重合型複合レジンDurafilをLiv ceneraで裏層した窩洞に填塞し、3ケ月を目標として臨床経過を観察し、後に抜歯して、病理組織学的に検索した。臨床的に不快症状を示した症例は、総数31例中3例10%で、その程度も軽く、打診痛のみであった。充血は17例55%,出血4例13%,円形細胞浸潤6例19%,象牙芽細胞の変化13例42%,象牙細管内桿状体発現4例13%,象牙前質の消失5例16%,補綴象牙質の新生21例68%であったが、その際損傷性病変の程度は極く僅かであって歯髄保護効果が十分に認められ、病理成績は全例良好であった。次に可視光線重合型複合レジンPhoto Clearfil Brightをα-TCPで裏層した窩洞に填塞し、2ケ月を目標に臨床経過を観察した。その結果、総数40例中2例5%に軽度の冷水痛を認めたが、その他特記すべき不快症状を認めなかった。
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