研究概要 |
DMBA誘発ハムスター舌癌の発癌過程における中間系フィラメントの発現様式を検討するとともに, 放射線照射の腫瘍細胞骨格に及ぼす効果を免疫組織化学的に検討した. この実験結果をもとに, 臨床例で, 中間系フィラメントの検出が, 特殊色素として有用か否かを, 舌癌, 歯肉癌例で, 検討した. 検索には, 被検病変のホルマリン固定, パラフィン包埋切片を用い, サイトケラチン(CK), インボルクリン(Inv)はPAP法で, 扁平上皮及び非扁平上皮特異ケラチン(SE,NSE)及びビメンチン(Vim)はABC法で免疫染色した. 細胞診標本では, ハムスター舌癌, 臨床例ともに, 間接法染色を施した. 結果 (1)正常及び反応性病変では, CKは重層扁平上皮で全層性に, SE及びNSEは表層に, Invは中層及び表層に, 陽性であったが, Vimは陰性で, これらの抗体により, 重層扁平上皮の分化度が解析できた. (2)発生した扁平上皮癌組織では, ケラチンは, 抗原発現が不規則でモザイク状の混在像を示すが, CKでは角化につれ強染し, 分化度に対応した. また, 核周辺及び細胞質辺縁局在の細胞群が認められた. Invは分化した部に陽性で, 角化部外方に接近して存在し, 発現部位に一定の傾向を認めた. Vimは, 未分化な部で常に検出された. (3)放射線照射では, 非腫瘍組織照射群で真皮の活動型線維芽細胞が, 腫瘍組織照射群の未分化部でVimが, ともに強陽性になる傾向を認めたが, 未照射群との間に有意の差を認めることはできなかった. (4)細胞診標本では, 腫瘍細胞質全体に, SEのび慢性陽性像を示したが, その局在を弁別するには至らなかった. (5)臨床例からの腫瘍細胞診標本では, SEで全例が強染し, ケラチンが腫瘍の上皮性由来の同定に, また, Vimは低分化例で陽性像を示し, 分化度の指標として, ともに有用であることが判った. しかし, Inv陽性症例はなく, ハムスター組織標本で発現個数が, 僅少であったことと対応して, 今後の検討課題と思われる.
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