研究概要 |
〔目的〕糖脂肪酸エステルの化学合成を行ない、得られた人工糖脂質を各種の生物活性検定に付し、新しいタイプの医薬や農薬の開発を意図する。 〔成果〕1)糖脂質の調製:中性単糖,アミノ糖,二糖,アスコルビン酸,多糖などの糖質を原料として、O-acyl,N-acyl,O-alkyl,N-alkyl誘導体を数多く合成し、物理化学的諸性状を調べた。 2)抗腫瘍性・免疫調節作用:a.細胞培養法により、L-5178Yなどの癌細胞に対する傷害作用を検定し、glucose3-laurateをはじめ、多数の試料に活性を認めた。b.一部の試料では、in vivoの抗腫瘍効果も観察された。c.trehalose esterと内毒素の併用療法により、モルモット肝癌(line10)が顕著に退縮し、完全治癒例が70%以上に達することを見い出した。本効果は、全身性免疫機構の関与に基くものと推定される。d.sucrose esterなどが、E.coliに対し、感染防御作用を示すことを確認した。 3)植物成長調節作用:アベナ伸長試験法を用い、この種の化合物の中に植物成長を促進もしくは抑制するものがあることを見い出した。3-decyl-amino-および3-laurylamino-3-deoxy-D-alloseの強い促進効果は特に興味深い。 4)植物病原菌に対する抗菌作用:Penicillium属に対するTBZの抗菌性がsucrose esterの添加により、著しく強化されることをカンキツ類について証明した。 〔結論〕人工糖脂質の研究を今後さらに推進することにより、生体応答調節物質(BRM)や人蓄無害の農薬が開発できるとの見通しを得た。
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