研究概要 |
安定イオウ-イリドの合成化学的応用の一環として、本研究を行った。ジメチルスルホニウム-ジアセチルメチリド(la)と塩化アセチルとの反応によって得られた3-メチルチオ-2,4-ペンタンジオン(2)及び2-アセトキシ-3-メチルチオ-2-ペンテン-4-オン(3)をクロロトリメチルシラン-トリエチルアミン-塩化亜鉛の系、いわゆるDanishefsky法により、O-シリル化を行い、それぞれ、2,4-ビス(トリメチルシロキシ)-3-メチルチオ-1,3-ペンタジエン(4)及び2-アセトキシ-3-メチルチオ-4-トリメチルシロキシ-1,3-ペンタジエン(5)を得た。この方法による(la)からジエン(4)の合成は数工程を要し、合成化学的応用の価値は少い。そこで、イリド(la)からジエン(4)への直接的なジエノールシリルエーテル化を種々検討した。その結果、クロロトリメチルシラン-トリエチルアミン-ジクロロメタン系で、ほぼ定量的にジエン(4)を得ることに成功した。 一方、ジメチルスルホニウム-アセチルメトキシカルボニルメチリド(lb)は、クロロトリメチルシラン-ヨウ化ナトリウム-アセトニトリル系を応用することにより、直接的なシロキシ化が進行し、2-メチルチオ-3-トリメチルシロキシクロトナート(6)を合成した。(6)を強塩基存在下にジシロキシ化を試みたが、目的とするジシロキシジエンは得られなかった。 本実験によって新しく得られたジエン(4)及び(5)の立体配置は決定できなかった。ジエン(4)は、Diels-Alder環化付加反応及びカルボニル化合物、イミン類に対して、ルイス酸存在下、マイケル形付加反応が予想通り進行することを確認した。以上の結果は、イオウ-イリドよりアルキルチオ基を有する他の有用なジエン類の開発に価値ある知見を与えるものと評価することができる。
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