研究概要 |
(1)以前の我々の研究結果で高度好塩菌H.halobiumに第四番目のレチナール蛋白が存在することを示していた。我々はこれをホボロドプシン(phoborhodopsin)と命名し(pRと略す)、閃光光分解法を用いてそのホトサイクルを明らかにした。光照射によって、350nmに吸収極大のある光化学中間体が生成し、それは室温では約140msecの半減期で530nmに吸収極大のある中間体に変化する。その中間体は約300msecの半減期でもとのpRに戻る。 (2)H.halobiumは長波長の光に対して寄って行くという正の走光性をしめす。この受容体はセンリリーロドプシン,SRであるとの仮説を実証するために、正の走光性の作用スペクトルを正確に測定しSRの吸収スペクトルと比較した。両者はよい一致を示したので、現段階では受容体はSRと考えられる。 (3)バクテリオロドプシン(bR)は吸収極大波長が570nmにあり紫色にみえる。そしてbRはリピッドとの複合体として膜状で存在しているので、紫膜と呼ばれている。bRをpH3.2以下の酸性条件とするか、または陽イオン交換カラムを通すことを初めとする種々の方法でbRに強く結合している陽イオンを除くと、吸収極大波長が長波長にシフトし、いわゆる青膜が出来る。我々は脂溶性陰イオンであるテトラキス(4-フルオロフェニル)ボロンを紫膜懸濁液に添加すると中性でも青膜の出来ることを発見した。イオン交換カラムを通すことによって作成した青膜に脂溶性陽イオン例えばテトラフェニルホスホニウムを加えると、紫膜への変換が見られた。添加塩の効果を解析する事により、発色団の近傍に疎水性部位があり、その部位の荷電状態が吸収極大波長に強く影響を与えると推定した。 (4)H.halobiumの細胞膜に存在する光駆動イオンポンプの活性の推定する1つの指標として光誘起膜電位がある。そのため、光誘起膜電位の脂溶性イオンを用いる測定法を確立した。
|