研究概要 |
ヘム蛋白質は生体における主要な酸化還元反応に関与している。その活性の中心はヘム、すなわち鉄ポルフィリン錯体である。鉄ポルフィリン錯体においても生体系にミミックな酸化還元系を構成する。その系の要素である各物質種の構造と各要素間の変化過程である反応の機構に関する理解を深めることが本研究の主な課題であった。このためポルフィリンとその金属錯体について電子状態と立体構造を重視しながら初年度においてポルフィリン分子の合成と精製,単離を主体とした研究を行った。単離可能であったポルフィリンについては結晶構造解析を行った。使用したポルフィリン分子はメソ位に複数のオルト置換フェニル基をもつテトラアリルポルフィリンである。このようなポルフィリンは位置異性体及び回転異性体を含むため数度にわたる分離精製が必要であった。まずアミノ基を置換基とするものについて5α,10βーbis(aminophenyl)ー1S,20ーdipheny lporphyrinがキラルな対称性を示す興味深い立体構造をとることから結晶構造による確認を行なった。(発表準備中)さらにシアノ基を置換体とする回転異性体についても合成、構造決定を行なった。これらのポルフィリンの鉄錯体も合成したが、合成反応中における異性化という新たな困難に遭遇している。一方、異性化反応の心配ないTet【ra_λ】【^(kis)(z、6ーdichlorophenyl)】porphyrinの鉄錯体について【H_2】【O_2】等を用いて酸化還元反応を行なったところこの錯体自身の分解は遅くなるが、生成物は単純でなく数種から成り単離は困難であった。以上のことなどから酸化還元反応 構の理解にはさらに基礎的な物質を用いた実験を確立しておく必要が生じた。そのため昭和61年度にはoctaethy lporphyrinの鉄錯体を用い、配位子として置換基の種類を多様化できるピリジン類を用いた配位反応の研究を行なった。特に注目される反応として3ーピュリルアミンを用いた時には中心鉄の3価から2価への還元が認められた。詳細は薬学会107年会で発表する。
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