耐性菌によるテトラサイクリン排出機構の性質を解明するため、まず、耐性菌より調製した反転膜小胞を用いて、テトラサイクリン輸送のエネルギー共役機序を検討した。この研究の途中経過において、TC排出系が主としてΔPHによって駆動される【H^+】との逆輸送系であることを見出し報告した(論文リスト1)。ΔPHとTC蓄積量の関係は傾き1の直線的比例関係であり、これは、TCの輸送が【H^+】との1=1の交換によることを示している。一方、ΔΨに関ては、当初、人工的ΔΨ7=よりTC輸送が駆動されないことから電気的に中性な輸送と考えていた。しかし、その後の詳しい解析から 17mV以上のΔΨが与えられた場合にはΔPHがなくともTC輸送が駆動されることが見出された。ΔPHに関してはこのような閾値は存在せず、OmVから直線的に比例するが、Rineticsの解析からは、50mV以下のΔPHでは輸送担体のTCに対する親和性が低く、輸送系の効率が悪くなることが示された。 次に、輸送担体である膜蛋白質tetAを固定するため、TC耐性遺伝子をマルチコピープラスミドにクローニングし、マキシセルを調製してプラスミド性蛋白を35S-メチオニン標識した。これにより、35KDaの分子量を持つtetAが同定され、オクチルグルコシドにより可溶化された。しかし、放射性標識は大量精製に適さず、減衰の問題もあるため、次に抗体による同定法を確立した。tetA遺伝子の塩基配列により決定されたC末の14アミノ酸相当のペプチドを合成し、このペプチドに対する抗体を調製した。この抗体はtetA蛋白を抗原として認識することが確認された。この抗体をCNBrセファロースに結合したアフィニティーカラムを用いてtetA蛋白の精製を行った。 次に、再構成膜でのエネルギー供与系としてバクテリオロドプシンを組み込み、光共役にプロトン駆動力を生じるリポソームを調製した。この膜へのtetA組み込みは新年度の課題である。
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