研究概要 |
動脈硬化による高血圧症, 血栓や血管れん縮が老化とともに多発しているが, これは血管内皮細胞の機能が加齢とともに減弱することも一因であるという観点から, 血管の反応性, 血管内皮機能と血小板の相互作用が老化により, どう変化するかを薬理学的な立場から検討した. 1)血管の拡張反応は加齢とともに減弱してゆき, あたかも血管内皮が損傷をうけた時と同じ現象がおきた. 2)血管にアカチルコリン, ヒスタミン, ATP, アデノシンを適用しておこる拡張反応は血管平滑筋でサイクリックGMPの産生が増加したためであるこを明らかにした. 3)加齢, あるいは内膜損傷により拡張反応の消失した血管では, サイクリックGMPの産生は認められなかった. 従って, 加齢によって内皮細胞の機能が低下し, 拡張因子の産生が減少し, ひきつづくサイクリックGMPの産生が低下していることが判明した. 4)血管にアセチルコリンを適用すると拡張がおこるが, この時, 血管内腔の潅流液を血小板凝集系に添加すると, ADPによって惹起される血小板凝集は抑制された. 5)老令ラットの血管潅流液の抗血小板作用は著しく減弱していた. また内膜を損傷させた血管の潅流液には抗血小板性は認められなかった. サイクロオキシゲネース阻害剤処理後, この潅流液の抗血小板作用は消失したのでプロスタグランジンI2が関与しているらしいことが示唆された. 以上, 血管内皮細胞から放出される血管拡張因子や抗血小板活性を有する物質は老化にともない減少することが明らかになった. また血管拡張を仲介しているサイクリックGMPの産生も老化血管では著しく減少していることも明らかになった.
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