研究概要 |
ショウジョウバエの初期発生において体節形成,神経系分化に直接関わると考えられている遺伝子には、遺伝子の一部分としてホメオボックスと呼ばれる配列が共通して存在する。ホメオボックスは脊椎動物ゲノム中にも存在し、脊椎動物の体節形成等を支配しているものと期待されている。私は、形態形成,神経系分化の発生生物学的な記載の多いニワトリ胚の発生におけるホメオボックスを持つ遺伝子の機能解析を行なっている。初年度には、ニワトリゲノムDNAライブラリーを作成し、ホメオボックスを持つ遺伝子5コをクローニングしてホメオボックスの塩基配列を決定した。今年度は更にコスミドライブラリーを作成し、新たに10コのホメオボックスを持つ遺伝子をクローニングしてホメオボックスの塩基配列を決定した。これらのうち11コはゲノム中でクラスターを作っていることが判った。Northern解析により、各々の遺伝子は固有の長さをもつmRNAをコードしており、4→11日胚で発現が観察された。クローン226とαの遺伝子発現は例外的に4→7日胚に限られた。ニワトリ4日胚cDNAライブラリーを作成しクローン1.4(mRNAは1.7kb)のcDNAクローンを分離し、塩基配列の決定を行なった。このcDNAクローンは5´側の約500bpを欠いていたので更に完全長のクローンを得るべくcDNAライブラリーの再作成を行なっている。cDNAクローンを用いてセンス及びアンチセンスの標識したRNAプローブを作成し、ニワトリ4日胚切片に対する in situ hybridizationで、遺伝子の空間的発現パターンの解析を行なった。これの条件決定に予想外に時間がかかったが、最近ようやく系が動きはじめ、予見的にクローン1.4は脊髄で発現していることが判った。同じcDNAを発現ベクターに組みこみ、大腸菌で発現させている蛋白を調製し、これを抗原として抗体を調製すべくマウスを免疫中である。抗体を用いて更に詳細な空間的発現様式の解析を行なう。
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