研究概要 |
妊娠中の高温環境が胎児の発育と生後発達に及ぼす影響を調べるため, 妊娠マウスを水槽につけて高温を負荷し, その胎児及び出生児を観察した. 1.胎児の器官形成期に当たる妊娠8日に, 42°Cを12.5〜15分間または43°Cを7.5〜10分間, 母マウスに負荷し, 妊娠18日に開腹して胎児を調べた. 外表と骨格の奇形が温度と負荷時間に応じて増加し, 42°C12.5分間以上, 43°C8.5分間以上で有意の催奇形作用が認めされた. 外表奇形は神経管奇形(外脳症・無脳症・脳膜瘤など)が, 骨格では脊髄・肋骨など軸性骨格の奇形が最も多く誘発された. なお, 高温負荷後経時的に胚子を組織学的に検索したところ, 1時間後に神経上皮組織内で有糸分裂像が消失し, 6〜12時間後に壊死像の増加が認められた. 以上から, 器官形成期に負荷された高温は細胞の分裂・増殖を阻害し, それによって種々の奇形を誘発すると考えられた. 2.胎児中枢神経糸の発育時期に当たる妊娠12〜15日に1日1回または2回, 42°Cまたは43°Cの高温を10分間ずつ母マウスに負荷した後, 自然分娩させてその子マウスの発育, 行動, 学習能力を調べた. 雄, 雌ともに対照群に比して体重が低く, 対照群に体重がcatch upする傾向を示さなかった. オープンフィールドにおける観察では, 高温負荷群のマウスは行動量が少なかった. 水迷路およびシャトルボックスによる学習試験では, 高温負荷群は対照群よりも学習効果が劣り, 誤動作も多い傾向が見られた. 生後11週齢時における脳重量は, 高温負荷群が対照群に比べて有意に低かった. 3.妊娠8日の母マウスに単独では催奇形作用をもたない用量のエタノール(2.5%水溶液.0.015ml/g)と高温(42°C分間)を同時または1時間間隔で負荷したところ, 外表及び骨格奇形の頻度が単独処理群に比べて有意に高くなり, 低用量域のエタノールと高温がマウスにおいて相乗的な催奇形作用を有することが示された.
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