LEC法による結晶成長過程の特徴を備えた模型を作り結晶および融液の部分の温度分布をシミュレートした。 1.結晶中の温度分布と熱応力 結晶を有限円柱とみなした場合の温度分布と熱応力の厳密解が得られたので、さらに、熱応力の最も少ない成長方向を見つけるために、熱応力の成長方位依存性を調べた。この結果、〈111〉成長が〈100〉成長よりも熱応力が小さいことが分かった。しかし、結晶断面の転位密度はこの逆の傾向を示すため、熱応力だけからでは転位密度の方位依存性を説明できないことが明らかになった。転位密度の成長方位依存性の説明は容易でないので、熱応力から転位配列パターンを導き出すことを試み成功した。 2.融液中の温度分布と対流 融液に縦磁界を加えた時の融液中の温度分布と対流を電子計算機により数値的に求めるプログラムにより、磁界による融液中の対流は抑えられることが明らかになった。また、ルツボの回転にも、縦磁界が流れを軸方向に二次元化するのと同じような作用があることが分かった。これより、融液にルツボの回転を加えることにより、良質な結晶を得ることができることが分かった。さらに、融液の表面近傍には、シリコンと同じように、表面張力による流れ(マランゴニ対流)が存在する可能性があるので、その振舞と磁界の効果を調べた。その結果、マランゴニ対流は自然対流によく似た性質を示すことが分かった。
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