液体が織物などの多孔性物質中の空気を置換しながら移動していくいわゆる毛管浸透ぬれ現象の定常特性は勿論、他の方法では測定できなかった過渡特性も含めて測定できる測定装置の開発と、この装置を用いて繊維集合体のぬれに関する一般的な理論を確立し、繊維物性を全く新しい観点から見直すことを目的に行った結果、次のような成果が得られた。 1.2枚の平行平板電極の間に多孔性試料を詰めたものは等価的に誘電体を含むコンデンサーと見なすことができる。これを水に接触させた場合、コンデンサーの電気容量は水の上昇にともなって直線的に変化する。従って電極間容量の経時変化を測定すれば、水位の上昇を正確に追跡できることに着目し、専用の電気容量(水位)測定装置を開発した。この方法は電気容量を測定するものであるから精度がよく、特に解像力にすぐれ、かつ応答速度も極めて速いので過渡現象に適した装置であった。 2.OPアンプの高級化、メモリー速度の高速化により、これまでの測定法では不可能であった秒以下での動的挙動をとらえることができた。すなわち繊維集合体のぬれ特性を左右するのは0.2〜0.8秒であることが明らかとなった。 3.毛管浸透現象について、Washburnの理論式、さらにこれを補正した理論式を検討し、今回の繊維試料を用いて得られた結果について分析考察した。織物などの浸透ぬれ現象は、瞬間的な水のとり込み(up take)から、0.1〜0.2秒における過渡状態、その後の定常状態を経て平衡に達していくものと結論された。 4.毛管浸透現象におよぼす界面活性剤の吸着層の効果は、極めて低濃度の界面活性剤でも著しく、この系においても過渡状態は0.1〜0.2秒付近で、定常態がそれに続くことが明らかになった。
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