衣料品、特に下着類等に対する消費者の白さ追求は異常と云っても過言ではない。とりわけ洗濯等によって達成される白さは本来被服の清潔さの裏付けとなるべきものであるが、近年蛍光増白剤(FBA)という染料によって付与される「まやかしの白さ」によって一部代替されているという事実がある。こうした流れの中にあって生活雑排水として排出され水質汚濁への影響も少なくないと見られるFBAについて、その逓減化を目標に検討した。 まず消費者教育を通じての逓減化の研究では、消費者の無意識的な問題行動を改善する必要があることに鑑み、消費者教育によって衣料品や洗剤中のFBAの存在を知らせ、洗濯や衣料品購入行動への注意を促そうとした。教育内容の構成には、衣料品の生産から洗濯排水に至るまでの衣生活の循環の中で問題を指摘した。教育実施時には実物見本や視聴覚機器など教具に工夫した。消費者の意識と実態のずれ、ならびに問題行動に対して、FBAに関する情報提供を中心にした科学的多方面的な教育を実施すれば消費者の白さ指向を押え、洗剤や衣料品購入行動が改善できることを確認した。従って逓減化のため今後このような教育機会の拡大、継続が必要と思われる。 一方FBAの有効利用に依拠して逓減化をはかる研究では、吸尽したFBAが繊維内部へ浸透し繊維構成分子と固着した場合蛍光が強化されることに着目し、浸透剤を利用して固着増強を試みた。即ち各種界面活性剤の蛍光比強度への影響を検討し、エーロゾルOTのような優れた浸透作用をもつ助剤を導入すれば、ある温度条件のもとではFBAの配合割合を減少させても所定の蛍光強度の得られる可能性を見出した。これは結果的には排水中のFBAを減じることになり、前述の消費者教育の結果と相俟って環境汚染防止のための一石となりうるものと考える。
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