研究概要 |
「沖縄の食文化の特徴について」の研究課題の最終年度にあたり, これまで集収してきた資料の整理と研究のまとめを行なった. 1.八重山の古文書等の文献検索と分析を行い, 八重山の焼香行事食の歴史的考察を行う一方, 石垣市在住の古老から聴取調査, ならびに内原家の焼香(年忌)の取材と調査を行い, 焼香行事の形態, 供物, 霊供盆, 客膳の献立や供え方など, 詳細に調らべ, 現在の実態を識る貴重な資料が得られた. その形態や献立は, 古文書『宮良殿内, 祭之時膳付日記』石垣家の『膳符日記』と比較検討した結果, ほぼ同様であり, 伝統的な献立形態が継承されている. しかし, 食材料や料理法には多少の変化があり, 焼香行事食の歴史的な変遷をみることができた. 特に霊供盆は動物性食品を一さい用いず, 精進料理で構成されており, 食材料や料理法, 器の名称にも日本の精進料理との類似性があるなど, 豚肉料理を主流とする沖縄本島とは異なる特色がある. 八重山は17世紀初頭, 大和在番が設置され, 桃林寺の建立や仏教の招来に伴なって日本の文化が流入した背景があり, 食文化にもその影響が強い. 以上の結果は日本生活文化史学会で発表した. 2.前年度に引き続き, 石垣家の古文書『膳符日記』の解読と解説を行ない1866年から1978年までの約百年余の行事食の献立, 料理, 食品などについて詳細な資料が得られた. まだ未公開の文献だけに, 宮良殿内の膳付日記と併わせて, 琉球王朝時代から近年までの食生活史, 食文化研究の貴重な資料になるものと思われる. 今回は, 読み下しのみ活字化した.
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