研究概要 |
1.ラットの血漿中コレステロール濃度におよぼす大豆蛋白質投与の影響を検討するため, 4週齢SD系雄ラットを全卵蛋白質群, カゼイン群, 大豆群に分け, 20%蛋白レベル, 10%ラードの飼料で60日間飼育した. 実験期間を通じて大豆群の血漿中コレステロールとリン脂質濃度はカゼインや全卵蛋白質群に比較し低い傾向を示し, 成長期ラットにおいて大豆蛋白質による高コレステロール血漿の予防効果を認めた. 2.高コレステロール食(1%のコレステロールと0.25%のコール酸ナトリウムを添加)を投与し, 高コレステロール血症, 脂肪肝を発症させたラットを用いて, 食餌蛋白質の違いが, 血中, 肝中脂質の回復過程にどのように影響するか検討した. 大豆蛋白質を摂取するとカゼインに比較し糞中への脂質と中性ステロールの排泄量が有意に多く, 高コレステロール血症を予防し, コレステロールを含まない飼料に切り替えたとき, 高コレステロール血症と肝肥大からの回復もカゼイン群より速い傾向を示した. 3.健康な成人男子10名に蛋白質レベル0.8g/kgとしその1/6を米, 2/6を卵黄, 3/6をスキムミルクあるいは大豆蛋白質とし2週間投与した. コレステロールの摂取量は約1.3g/日. スキムミルク食では, 血漿総コレステロール, LDL-コレステロール濃度, 動脈硬化指数が実験食開始前の値より有意に高値を示した. 一方, SPI食では実験期間を通じて変化を示さなかった. しかし糞中排泄中性ステロール量は両食事間で有意な差とはならなかった. ラットにおいても, 健康な成人においても, 大豆蛋白質を摂取すると, カゼインのような動物性蛋白質に比較し, 高コレステロール血漿を予防し, 動脈硬化指数も低く保つことができた. それは, ラットでは大豆蛋白質を摂取すると体外へのステロール排泄が促進されるためであることを示した. 成人ではその機構を明らかにすることはできなかった.
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