研究概要 |
酸素系漂白剤による含金属染料染色布の脱色と損傷に及ぼす影響について検討を行なった。染色布中の染料に配位している金属(特に銅原子)が、漂白剤の触媒となって、分解速度を著しく促進するために、漂白過程中に、染色布の脱色と損傷の事故がが生じる。研究代表者は、その事故防止のためには無機のキレート剤であるEDTA【Na_2】-Mg塩と有機化合物であるタンニン酸,アミノ酸系界面活性剤のN-アシルアミノ酸塩が、有効であることを明らかにした。タンニン酸は、染色物を前処理することにより、EDTA【Na_2】-Mg塩とアミノ酸系界面活性剤は、前処理及び漂白系に、共存させることによって、脱色と損傷の進行が抑制された。これらの物質は、染色布中より金属(銅)をほとんど引き抜かないで、酸素系漂白剤に対する触媒活性を抑制する作用がある。その作用機構としては、布に吸着している染料に配位している金属(銅)に、配位結合していると推定した。実用化には、EDTA【Na_2】-Mgは安全性の面に於いて危険性があり、タンニン酸は、天然(主として植物)に存在するので安全性については問題はないが、染色加工工程で前処理する繁雑さがある。アミノ酸系界面活性剤は人体の構成物質であるアミノ酸より合成され、人体及び環境への安全性が高く期待されている物質であり、又実際に家庭では漂白処理は界面活性剤を添加して行なっているので、実用化には一番有効である。また、酸素系漂白剤は、含金属染料染色物のみならず、触媒活性な金属、鉄(【II】),鉄(【III】),銅(【I】),銅(【II】),コバルト(【II】)等が漂白系に共存すると使用出来ない欠点を持っている。研究代表者は、これらの金属が共存しても、酸素系漂白剤を使用できうる条件とこれらの金属にも触媒活性を抑制する物質をさらに検索するつもりである。
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