研究概要 |
チオラクトマイシンは細菌や植物などのII型脂肪酸合成酵素を阻害する。本研究では、細菌および植物の脂肪酸合成酵素を用いてチオラクトマイシンの阻害機構を解明した。 1.脂肪酸合成酵素系が触媒する6つの部分反応のうち、〔アシルキャリアプロテイン〕(ACP)アセチルトランスフェラーゼと3-オキソアシル-ACPシンターゼがチオラクトマイシンによって阻害された。しかし他の4種類の酵素は、阻害されなかった。またチオラクトマイシンの阻害は可逆的であった。アセチルトランスフェラーゼについて、阻害はACPに関して競争的、アセチル-CoAに関して不競争的であった。3-オキソアシルACPシンターゼについて、阻害はアセチル-ACPに関して非競争的、マロニル-ACPに関して競争的であった。 2.Pseudomonas aeruginosa M507の脂肪酸組成に及ぼすチオラクトマイシンの影響を調べた。P.aeruginosaはパルミチン酸,パルミトオレイン酸,バクセン酸を主成分として含み、ミリスチン酸とステアリン酸が微量成分として検出された。培地中のチオラクトマイシンの濃度を増加すると、パルミトオレイン酸とバクセン酸の比が変化し、パルミトオレイン酸の量比が増加した。この事実から、チオラクトマイシンは、脂肪酸のdenovo合成より、パルミトオレイン酸からバクセン酸への鎖延長反応をより強く阻害することが示唆された。 3.ホウレンソウのクロロプラスト、アベナの脂肪酸合成系を用いた実験からも、C16からC18への鎖延長反応の方が、C2からC6へのdenovo合成より、強くチオラクトマイシンによって阻害されることが明らかになった。しかしながら、C18からC24まで鎖延長反応に対するチオラクトマイシンの影響は、弱いことが明らかになった。
|