研究概要 |
枯草菌のタン白分解酵素Subtilisinとその基質(実はタン白性インヒビター)SSI(Streptomyces Subtilisin Inhibitor)に関連して以下の作業を行い、また以下の知見を得た。 1)FreeのSSIの結晶構造解析の分解能を1.85【A!°】に上げ(従来は2.6【A!°】)、更に精密化を行った。2)SSI-Subtilisin複合体の結晶構造解析の分解能を2.0【A!°】に上げ(従来は2.6【A!°】)、更に精密化を行った。3)上記1),2)の結果を利用して、酵素Subtilisinと基質SSIの各々について、両者の複合体形成に伴う構造変化の本質を、本研究のために新たに考案した"Difference Distance Map"及び"RelatineDifference Distance Map"を用いて、詳細に解析して、以下のような結論に達した。 3A)酵素Subtilisinのglobalな構造は、基質SSIとの複合体形成によっても、ほとんど変化しない。ただし、基質と直接接している部分でのlocalなincdced-fit movementは見られる。3B)基質SSIは、酵素Subtilisinとの結合に伴って、globalな構造変化を起すが、その詳細を見るとa)10残基程度で見た時、顕著な構造変化はどこにもない。b)α-らせん自身には顕著な構造変化はないC)隣接したβ-鎖の位置関係に顕著な変化はない、d)【α_1】-らせんとそれに続く残基60〜70のループ部分が、【β_1】,【β_2】鎖及びその間にある残基20〜28のループから約2【A!°】遠ざかっている。3C)上記3B)に見られる構造変化の機構は、今までに知られている"hinge bending機構"とも"helix shear機構"とも異る独特のものである。
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