ヒト血中あるいは尿中に混在する膵および唾液腺起源のα-アミラーゼアイソザイムの分別定量のため、膵のα-アミラーゼのみと特異的に免疫反応するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製を試みた。 ヒト膵液からSDS電気詠動的に単一成分になるまで精製したα-アミラーゼで免疫感作したマウス脾細胞とマウスミエローマとの細胞融合によって、膵α-アミラーゼと特異的に反応する抗体産生ハイブリドーマを検索したが、すでに報告した唾液α-アミラーゼ特異的抗体産生ハイブリドーマの場合よりも、膵α-アミラーゼ特異的抗体産生株の出現率は極めて低かった。しかし10数回の細胞融合の結果、ポリスチレンやニトロセルロース膜を用いるELISA法による試験で、一定の濃度範囲で膵α-アミラーゼのみと特異的に反応する抗体産生ハイブリドーマ2株を得た。これら2株の生産する抗体はいずれもIgMで、また殿粉を基質とするα-アミラーゼ活性を阻害しなかった。次いでこれら抗体を種々條件下で活性化セファロースやDEAEセルロースに固定化したが、抗体は完全に固定化されているにもかかわらず、免疫活性能を失った。この原因は用いた抗体がいずれもIgMで不安定なため固定化操作中に変性したものと考えられた。そこで細胞融合をさらに反復したところ、極く最近、膵α-アミラーゼ特異的抗体IgGを分泌するハイブリドーマを分離することができた。この抗体はα-アミラーゼ活性を阻害しなが、前述の抗体IgMに比し、酵素イムノアッセイ系で固定化抗体としても、また標識抗体としても十分使用できる安定なもので、パルオキシダーゼ結合抗体を調製し、サンドウィチ法で膵α-アミラーゼの定量曲線を描いたところ、少なくとも10fmol/150μlまで測定可能であることが判った。現在この抗体の詳細な性質の検討中である。
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