研究概要 |
本研究の目的は、肺マクロファージに多く存在するアルキル型コリンリン脂質を研究代表者が自ら開発した高速液体クロマトグラフィーによる分子種分離法を用い、肺マクロファージにおけるこのリン脂質の組成、代謝を分子種レベルで検討し、その存在意義に考察を加える所にある。その結果、次の点を明らかにする事ができた。 1.マクロファージを構成するリン脂質分子種分析(Biochim.Biophys.Acta 1985)肺マクロファージは約130種のリン脂質分子種から成り立っていた。1位に16:0,2位に20:4を有するアルキル型コリンリン脂質は多く存在しており、アラキドン酸(20:4)を有するリン脂質分子種全体の20%をも占めていた。 2.20:4を有するリン脂質分子種の生合成(Eur.J.Biochem. 1985)放射性20:4の取り込み速度を調べた所、生合成速度と分子種構造との間に一定の相関性を見い出した。1位に16:0又は18:0がエーテル結合を有するものの生合成速度は他の分子種に比較し極めて遅い事が明らかとなった。 3.活性化マクロファージでの20:4を有する分子種の代謝(Biochim.Biophys.Acta 1986)ザイモザンで活性化された肺マクロファージにおいて放出される20:4の供給源となるリン脂質分子種について検討した所、16:0-20:4アルキル型コリンリン脂質より放出された20:4は全遊離20:4の約50%を占めていた。 以上の知見より、肺マクロファージに多量に存在する16:0-20:4アルキル型コリンリン脂質は、静止状態でのマクロファージでは、細胞内20:4の主要な貯蔵庫として働き、細胞活性化に伴い、このリン脂質分子種はアラキドン酸又血小板活性化因子の主な供給源としての役割を果すものと思われる。 以上の分子種レベルでのリン脂質代謝の研究を通じ、16:0-20:4アルキル型コリンリン脂質の役割を論議する事ができ、当初の目的を充分果したものと考えられる。
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