1.転写因子と考えられる大腸菌RNAポリメラーゼ結合蛋白質のいくつかの部分的なアミノ酸配列を決定し、それらから推測されるヌクレオチド配列を化学合成し、これをプローブとしてその蛋白質の遺伝子を分離する一連のこころみをした。2.この方法により、結合蛋白質の1つであるSSPの遺伝子のクローニングに成功し塩基配列決定をした。この蛋白質は211アミノ酸からなり分子量24305ダルトンの中性蛋白質であった。3.in vivoの転写開始点を決定し、正常増殖時、緊縮抑制時とも同一地点から転写開始が起っていた。しかし、対応した領域にプロモーター配列と相同性のある塩基配列を見出すことはできなかった。この部分を種々の程度に欠失したDNA断片のプロモーター活性を調べると、通常の大腸菌プロモーターと同じく、転写開始点の上流約40bpまでが必須領域であったが、更に、その上流40bpが転写を増大させるシス作用領域であった。この部分は"曲がり"構造をしており、この領域に作用する転写因子の存在を相像させた。終結コードンの下流にも構造遺伝子枠が続き、マキシセル実験でもこの部分に対応した蛋白質が同定できたのでSSP遺伝子はオペロンを形成していることが明らかになった。4.SSP遺伝子の染色体座位決定を行い、69.5分であることを明らかにし、これは従来知られていなかった遺伝子であることが明らかになった。5.SSPの構造遺伝子の一部を欠損したプラスミドを用い、細胞染色体上のSSPを失活させる方法により、細胞生育に対するこの遺伝子の必要性を解析した。通常増殖条件ではこの遺伝子は必須ではなかった。6.構造遺伝子の一部を欠損したSSP遺伝子をプラスミドに挿入し、この欠損SSPを細胞中に蓄積させると細胞は低温感受性となった。この形質を抑制する細胞側の復帰変異株が高頻度に出現する。この細胞の変異部位の同定をこころみている。
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