研究概要 |
1.脂質転送反応測定の基質として用いる【^(14)C】コレステリルエステル(CE)標識LDLをLDLの特異的吸着剤であるデキストラン硫酸セルロースを用いて行った。血漿d>1.006画分に標識脂質を含むレシチンリポソームを添加してインキュベートし、吸着剤にLDLを結合させ、溶出してd<1.063画分を得た。アポBおよび脂質組成は天然LDLと同じものが得られた。 2.ヒト血漿LDL-HDL間でのCE転送の速度を測定した。識基質を含むLDLを血漿d>1.006画分に添加し37℃でHDL中にあらわれてくる放射能を経時的に測定して、両方向平衡反応の式にて結果を解析、速度を計算した。速度はLCATによるCE産生速度より数倍速く、またHDL・LDL濃度の積に比例した。従って血中で産生されたCEは速やかに各リポタンパク画分中に分布してゆくこと、またその速度は粒子の衝突の頻度に比例することが示された。 3.脂質転送タンパク質(LTP)はヒト血漿より約2000倍に部分精製した。デキストラン硫酸によるリポタンパク沈澱後、上清をフュニルセファロース,CMセルロース,DEAEセファロースによって分画、最終的に上記の標品を得た。血漿からの回収率は約10%、アポリポタンパク質の混入はなかった。 4.レシチン,トリオレインよりなるLDL大のマイクロエマルジョンへのLDLからのCE転送におけるLTPとアポリポタンパク質の作用を検討した。粒子は、アポタンパク非存在下ではLDLと融合しCEの自発的転送がおこりLTPはこれに殆んど影響を与えない。一方アポリポタンパク存在下ではこの反応は阻止され粒子は安定となり膜コレステロールの自発的転送のみがみられる。LTPはTGとCEの交換反応を促進し、各アポタンパク間にこの作用の特異性はみられなかった。
|