マウスを9Gyのガンマ線で全身照射し、その小腸クリプトの回復過程を追跡した。照射後各時点(2-4日後)において種々の線量のガンマ線を再び照射し、この2度目のガンマ線照射により誘起される細胞死と線量との関係を求めた。トリチウム標識したチミジンを用い、各時点で小腸クリプト内のどの位置の細胞がDNA合成をおこなっているかを調べ、細胞死の出現位置と比較した。この両者のクリプト内の分布はかなり異なっていた。 高感受性細胞群の回復過程がクリプト形成能細胞群の回復過程に比べ、一日の遅れがあることから、高感受性細胞群はクリプト形成能細胞群あるいは増殖細胞群と必ずしも一致しないことが判明した。高感受性細胞群は非常に大きな日内変動を示すことを見出したので、ガンマ線の種々の線量によって生じる細胞死数の日内変動を研究した。さらに、クリプト形成能細胞群についても、その日内変動を調べた。日内変動に関しても、そのピークの時間は2つの細胞群では違っている。このこともクリプト形成能細胞群と高感受性細胞群とは異なった細胞集団であるとの上記の結論を支持する。 下半身に9Gyの照射を施したマウスにおいては、3-4日目に幹細胞が盛んに分裂する。そこで、3-4日目の24時間にわたり、1回にトリチウム・チミジンをマウス当り15μCiの割合で、6-8時間おきに数回投与した。長期間飼育した後、これらマウスを0.5Gyの小線量で照射、3時間後に殺し、その小腸クリプトの組織切片オートラジオグラフィーを作製した。細胞死とトリチウムのラベルを同一切片で調べ、DNA上に長期間ラベルが存続していた細胞が高感受性細胞と一致しているかどうかを調べた。トリチウム・チミジン投与後1-2ケ月のマウスでは、かなりのラベルが死細胞の核上に見られ、相関は大いに認められた。
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