研究概要 |
γ線と物質の相互作用は、早くから研究され、現象が明らかにされている。一方、γ線の透過計算は、輸送方程式を解析的に解いているので、電子計算機の手を借りなければ精度のよい解は得られない。同一問題に対し、同じ断面積を用いても、各計算コードの手法により結果にかなりの差があるのが現状である。 γ線の輸送計算法として、長年基準の座を占めていたモーメント法は、軽い物質に低いエネルギーのγ線が入射したとき、点線源附近のγ線のふるまいを正確に表現できない事が最近明らかになった。又この方法は、均一無限媒質の体型しか計算できず、高エネルギーγ線で問題になる制動射線の効果も入れられない。 現時点で代表的な輸送コードであるディスクリート,オーディネイト法のPALLASとANISNで、低エネルギーγ線のベリリウム透過計算を行なった。比較実験データがないため、点モンテカルロ法のEGS4の結果と比較した。線源体型の取り方,空間,角度,エネルギーメッシュの取り方に工夫を加え、同一断面積を用いて、再生係数(ビルドアップファクターとも云う)とエネルギースペクトルを計算し、線源近くで10%以内,深い透過でも40%以内で一致が得られる事を明らかにした。 最近重い物質の後方に人体が来ると無限媒質遮蔽体で求めた線量より高くなる事が問題になっている。人体の中での線量の上昇を考慮した遮蔽材一組織の計算を行ない、遮蔽計算に利用できる換算係数を算出中である。上記結果は、研究代表者も委員の一人である、米国の原子力学会基準委員会ANS-6,4,3から出されるγ線の減衰係数と再生係数のデータセットの一部に用いられる予定である。
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