研究概要 |
現象の連続性に注目してきた従来の地理学の研究に対する反省のうえにたって、最近の地域・都市,社会・経済などを研究対象とする科学分野でとりあげられている不連続性に注目し、地理的現象を分析した。 地理的現象の連続性と不連続性を空間スケールごとに捉えるとともに、不連続性が発生する要因を考察することを主たる目的とした。具体的には(1)地域レベルにおける社会経済発展水準の不連続性、(2)都市圏レベルの都市圏(商圏)内の不連続性と都市の内部地域、とくに都心と混合地域(漸移地帯)の不連続性.(3)コミュニティレベルの住民の生活(居住)環境や地域・社会問題に対する意識から認知空間の不連続性を分析した。 地域レベルの分析では、空間的分布(拡がり)について、連続性と不連続性の存在を概括的に確認した。社会経済発展水準の不連続性については、日本を大きく地方区分して、不連続性からみた地域結合分析を行った。とくに東京-沖縄を事例に経済活動面における不連続現象の存在を証明した。また従来の無限拡がりをもつ地域を仮定する中心地理論に対して有限の拡がりをもつ地域;円形都市モデルを仮定し空間的探索を組み込んだ中心地の立地選択過程をモデル化することを試みた。都市圏と都市の内部地域レベルの不連続性については、都市圏と商圏、都心と混合地域のそれぞれを金沢・名古屋・福井,東京・大阪・横浜・福岡などの事例都市をもって解明した。コミュニケーションレベルでは、居住環境に対する居住者の意識と認知空間の捉え方について、高齢者を対象に自由時間とコミュニケーション・スペースのとり方から分析を実施した。 さまざまなレベルとスケールによる現象の把握と分析により、不連続性の存在が確認された。また、その発生要因はそれぞれ異なることが理解された。
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