表記の課題による調査は今年度が第2年次であり、最終年次となる。ここでは前年度の報告書概要において、残された問題点についてのその後の成果の概要を中心に、実施計画に従って報告する。 1既存の気象・降灰に関する資料収集に加えて、降水の都度、その降水量風向(鹿児島大学教育学部屋上における)やpH値の測定は現在でも継続実施中であり、報告書の中に取りまとめてある。 2.桜島噴火の影響が著しい地点として、初年度に約10点を選定し、測器を配置し、pHその他数項目の測定を依したが、諸般の事情から統計処理を行うに足る結果が得られたのは4地点であった。得られた結果の詳細については報告書に譲るが、降水のpH値の頻度分布は4.0〜5.0の場合が約50%を占め(鹿児島市内の場合)明きらかに酸性雨という現象が把握された。しかも、その出現頻度はすこぶる高いといえる。初年度においては、桜島の火山噴火回数が多く、降灰量も比較的多かったので、この事実について肯首できるのであるが、今年度に関しては必ずしも火山噴火の影響とは結びつかないような点も認められる。この点に関しては今後、報告書のデータを利用して詳しく分析を試みたい。 3.本研究課題とは別に行った(鹿児島大学南科研資料センターの援助)桜島周辺の降灰影響調査の報告書の結果に基づく地域区分を利用し、湧水、河川水などの水文環境に対する影響に関する資料整理を行った。その結果降灰量とpH値の地域的分布の差異が、比較的明瞭に認められた。即ち、水文環境におけるpH値は大隅半島部に低く、薩摩半島側に高くなっていることが特徴的である。これは卓越風向が西〜北西の時期を中心に測定を行ったため、このように表われたものと思われる。この点についての詳細な分析も、今後の課題となる。
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