研究概要 |
伊豆諸島の火山噴出物中に挾在する縄文時代以降の多数の遺跡・遺物について、火山噴出物との層位関係を明らかにし、火山活動の消長、年代に関して検討を行い次の成果を得た。 1.伊豆諸島の火山噴出物中から広域テフラである姶良Tn火山灰(約22000年前)と鬼界アカホヤ火山灰(約6300年前)を発見した。これによって伊豆諸島間における火山噴出物の対比がより具体的にかつ正確に行なえるようになった。また伊豆諸島で発見された遺跡・遺物の層位関係や、関東・東海地方との対比、さらには人類遺跡の分布、立地条件と火山活動との関係についても論及できるようになった。 2.姶良Tn火山灰は八丈島で東山の後期カルデラから噴出した軽石流堆積物の最上位に発見した。なおこの軽石流堆積物について【^(14)C】年代測定を行ったところ、24400±430y.B.P.(N-5123),21600±320y.B.P.(N-5133)の年代を得た。この値は今まで知られている姶良Tn火山灰の年代と大きく矛盾しない。 3.八丈島では湯浜遺跡において縄文時代の遺物出土層の上位から鬼界アカホヤ火山灰を発見した。これによって湯浜遺跡から発見された土器は、少なくとも縄文時代早期以前に溯ることが明らかになった。 4.大島では古期大島層群の【O_(40)】部層から鬼界アカホヤ火山灰が認められる。龍の口遺跡では鬼界アカホヤ火山灰の直下から東海地方西部の縄文時代早期最末期を示す天神山式土器が出土した。このことから九州地方と東海・関東地方との間で鬼界アカホヤ火山灰と土器型式との関係について地域的矛盾は認められなくなった。 5.伊豆諸島の火山噴出物中に認められるこのほかのガラス質火山灰は将来重要な層準指示層となりうる。
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