研究概要 |
〔研究の目的〕ISFETは増幅や論理素子として使われているFETのゲート部分を露出させて溶液に接触させ、ゲート部の界面電位が溶液のpHによって変化することを利用してpH測定に応用するものである。この素子は、本来が半導体技術を応用したものであるから、小型かつ安価に製作でき、応答速度や堅牢性の点でも従来のガラス電極にない特長を持っている。これらの特長を利用して、生物の基礎的実験に応用した報告はまだない。本研究の目的は、ISFETが小型であることと応答が速いことに着目して水素イオンの出入を伴なう生体反応を実時間で追跡する測定にこの素子を応用することである。 〔方法〕高速反応の開始として、二液急速混合法を利用する。pH測定と光学的測定の同時測定を行なう。当初の計画では閃光分解法との組み合わせも考慮していたが、一つは予算的制約から、もう一つは後に述べるような技術的困難から閃光分解法は次の計画にまわすことにした。 〔結果と検討〕ISFETの基本的性質について基礎的な実験を行なった。およそ0.005pHユニットの変化を10ms程度の時間分解で検出できる見通しがついた。ナトリウム,カリウムなど他のイオンに対する応答は無視できることを確認した。但し、問題点として挙げられるのは、(1)低塩濃度下、(約0.1mM KCl)でFETの出力が不安定になること、(2)FETが、光に直接応答するため、強い閃光照射と組み合わせて、閃光分解による【H^+】移動(例:バクテリオロドプシン)を計測するためには照射部と検出部を幾何学的に離すなどの工夫が必要である。
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