高度好塩菌ハロバクテリアにバクテリオロドプシン、ハロロドプシンについで見出された第3のレチノイド蛋白tR(SR;センサリーロドプシン)は、バクテリアの走光性の光受容体とされた。SRは菌体における含量が、著しく少ないため、その研究にはbR、hR欠損株Fl×3を用いた。Fl×3よりSRを含む膜小胞を調整し、レーザーフラッシュホトリシスによりその光化学中間体の性質を調べた。SRはパルス光照射後ナノ秒領域に680rm付近に最大変化を持つ。SR680が生成し、sR370に変換すると考えられていたが、我々はその間に520rm付近に吸収極大を持つ新しい中間体を見い出した。これはバクテリオロドプシンのL-中間体に対応するものと考えられる。すでに我々は光化学中間体SR370の生成量が温度を下げるとともに減少し、-10℃以下では、ほとんどその生成が認められないことを報告した。この現象を解明するため、先行する中間体SR680の生成量の温度変化を調べると、SR370と異なり低温にしてもその生成量は変化しないことを明らかにした。この結果SR370より以前に光化学反応サイクルのバイパスがあることが明らかとなった。このバイパスの存在とその生理機能との関係は今後の問題である。SRとバクテリオロドプシン、ハロロドプシンの性質を明らかにする目的で種々の塩の存在下における中間体の寿命に対する圧力効果を研究した。その結果SRは負の活性化体積を持つこと、この活性化体積は塩の種類により大きな変化はないことが明らかとなった。SRの単離精製に関しては適当な界面活性剤が見つかったこと、塩析、吸着カラム、ハドロホービックカラムによりかなりの不純物を除くことに成功したが、単一蛋白にまでは至っていない。この問題についてはひき続き研究を続けたい。
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