研究課題
昨年度は、科学的思考の特徴および構造の明確化やそこで明らかにされた内容をもとに科学的思考の発達を調べる調査問題を作成し実施することが主たるねらいであった。今年度は、昨年度実施した調査問題の不十分な点を修正し、再調査を行ない科学的思考の発達の実態をより精緻に調べることが主要なねらいとされた。われわれは、科学的思考の中でもその中核をなしていると考えられる論理性の発達(推論の能力の発達)を調べる問題を単純なものから複雑なものに到るまで、6種作成し同一問題を小学校4年生から大学生までを対象にし実施してきた。各部分の調査結果の集計を現段階で終了しているが、全体にわたる考察を加えるまでにはいたっていない。したがって、詳細な結論は次年度の報告書中で詳らかにするが、これまでの調査結果をもとにして研究分担者と数度にわたる討論を繰り返した結果、極めて概略的には以下のようなことが明らかにされている。第一に、科学的思考の発達は特定の年齢になればどの子どもも特定の科学的思考が発達するということは必ずしもありえないのではないか、ということ。第二に、科学的思考は子どもの既存の考えに左右され個々人により異なっているのではないかと考えられること。第三に、科学的思考の発達はゆるやかな傾斜状に発達する時期と飛躍的に発達する時期が存在すること。第四に、科学的思考のあるる特定の領域は大学生でも極めて未発達であること。第五に、科学的思考の各種の問題に対して子どもはそれを分析的に捉えるのではなく、全体的に捉え子どもなりの特定の説明様式をもっていると考えられること、など。現在、これらの知見に対して詳細な考察が加えられつつあり、更により複合的な調査問題が作成され実施に移されつつある。こうして得た種々の科学的思考の発達に関する知見を総合的に考察し、次年度の報告書に盛り込む計画である。
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