本研究における主要な目的は、以前に我々が開発した実験方法を、それほど特殊な訓練を受けていない一般の研究者が比較的容易に実験することが出来るように実験機器の改良および自動化を行うことであった。この点に関してはほぼ所期の目的を達成することが出来た。開発したことの重要な点は次の通りである。 (1) 出来るだけ多くのことをコンピューターで制御することによって、研究者の技術の差が結果に影響を与えることがないようにした。 (2) スペクトルの測定については、光電子増倍管からの出力をレコーダー上でアナログ的に記録すると同時に、アナログ-デジタル変換器を用いてデジタル化し、コンピューターのメモリーに格納する。その後必要に応じてフロッピーディスクなどの記録媒体に記録する。 このように装置を改良した結果、現在では、研究者がマイクロコンピューターのキーボードから対話方式で必要な実験条件をキーインすることによってかなりの測定が自動的に行えるようになった。また、実験結果をすべてコンピューターで処理出来るために、実験結果の解析が正確にかつ能率的に行えるようになり、研究が大きく進展した。 具体的な研究成果を以下に示す。 (a) ベンジルのエチレングリコール溶液で観測されるりん光について、マイクロ波との二重共鳴の実験を行うと、二十数本もの共鳴線が見出されて、環境のごくわずか異る多くの発光種の存在が示唆される。それぞれの発光種について独立にスペクトルを測定することが出来た。 (b) 白金の二核錯体【K_4】〔【Pt_2】【(P_2O_5H_2)_4】〕においては、エネルギー的に近接した2つのスピン副準位が存在する。これらの副準位について独立にスペクトルを測定し、かつ解析することが出来た。
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