本年度の研究実施計画にもとづいて、試料セル、光学系、および信号検出器の設計、製作を行なった。試料セルは、試料の取り付け取外しの容易さおよび耐溶媒性を考慮して取り外しの可能な半円筒形プリズムを採用し、ダイフロンで製作した。また圧電素子の高インピーダンスによる電気的雑音を妨ぐため、圧電素子の近傍にインピーダンス変換器(NJM2006F)を取り付けられるような構造にした。界面膜内での観測領域を決定する重要な役割をもつ半円筒形プリズムには、入射角の制御が比較的容易である深い入射角領域で光の侵入深さをより短くするために、高屈率ガラス(LaSFO8n=1.89)を入手し加工した。光学系は、入射角を高分解能で調整するために、パルスステッピングモーターとウォームギヤを組合わせて製作し、機械的入射角分解能として最低2.7×【10^(-3)】度を達成した。また入射角を再現性よく調整するために、パルスコントローラーによりステッピングモーターを制御し、入射光のセルに対する相対的な位置および界面での入射光断面積を一定にするために、光学マウントおよびレーザーコリメイトレンズを使用した。光学系全体は約5mm厚の鉄製ケースに納め電気的雑音に対処するとともにケース全体を4個のリングダンパー上に設置し機械的振動を除いた。アルゴンイオンレーザー(スペクトラフィジックス161B)光の試料による吸収の結果生じる光音響信号をダイレクトカップリング法により検出するために、電極面積、静電容量、表面処理の異なった種々のPZT圧電素子を製作し、電極面積が小さく静電容量の少ない圧電素子が、プリアンプおよびロックインアンプを用いた本測定系に適していると判断した。以上、セル、光学系、検出器の設計、製作を行ない、次年度の研究に対する基礎的検討を行ないつつある。
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